令和元年度後期「大学と地域」
1.受講生が取り組む授業時間外学習の週平均時間
○全くしていないとの回答が半数以上であり、大きな問題だと考える。次年度は授業運営
方法が変更となることから、改善を図りたい。
○平均よりもやや長いようではあるが、誤差の範囲内である。授業終了後に課題を与えて
いるわけではなく、また必ずしも予習・復習が必須である授業スタイルでもないため、
劇的に伸びることはないと考えている。
2.受講生が実感する学習成果
○自由回答欄を見ると、「地域のことを知ることができた」と書く学生が多く、この学修
成果自体を否定はしないが、「思考力、表現力等の汎用的能力を身につける」といった
科目の目標の達成度が今一つである点については改善の必要性が高い。次年度の「大学
と地域」改革に期待したい。
3.授業時間中における講義内容に対する自主的な考察・取り組み
○前期同様にファシリテーションスキルを活用し、チェックインを丁寧にしてもらった後、
ペアワーク、グループワークを毎回実施した。授業内容を振り返り、相互に不明点を質
問し合い、それでも解明できない点をresponで書き込んでもらっている。大量の書き込
みがあり、その中からいくつかを選択し、話題提供講師に解説してもらうようにしてい
る(質問一覧は話題提供講師に提供しており、講師によってはその全ての回答を用意し
てくれることもある)。今期はさらに、選ばれた書き込みをした学生に書き込み内容を
ただ読んでもらう取り組みを加えた。質問はしづらくても、このスタイルならば結果と
して大勢の前で堂々と質問したことになると考えたからである。学生はこの取り組みも
受け入れてくれ、大教室にもかかわらずそれなりの質疑応答が実現できた。堂々と質問
できた学生にとって成功体験になっていればと願う。話題提供講師からの評価も高く、
今後も継続して取り組む予定である。
4.授業に対する総合的評価や受講生から指摘された点
○「大学と地域」は、担当するには苦労の多い科目だが、学生とのコミュニケーション、
話題提供講師とのコミュニケーションが楽しく、なにより学生と話題提供講師とのコミ
ュニケーションが活性化できていることがうれしい。話題提供講師からは、「来年度も
話題提供したい、ぜひこの授業スタイルを続けて欲しい」、「自身の授業でもやってみ
ようかな」とのコメントを頂戴している。アンケートの自由回答の傾向を見ると、前述
の「鹿児島の事が知れた」の他は、授業スタイルを評価しているものが多い。前期は自
由記述の多くが授業スタイルに集中していたが、後期はそこまで極端ではない。初年次
セミナー等の多様な授業スタイルを学生は経験してきており、新しい授業スタイルに慣
れてきたからだと考えている。いずれにしても、ちょっとした授業スタイルの工夫でこ
こまで成果が出ていることに驚いており、次年度の「大学と地域」改革に活用できれば
と考えている。
5.その他
○初年次教育で学生に何もかも全てを身につけさせようとするのは間違っている。学問の
区分を超越して必要とされる基礎体力を身につけてもらうのが共通教育の使命であり、
その使命に特化して教育すべきだと考えている。特に、学力の3要素のうち、「知識・
技能の蓄積」を除いた部分、すなわち「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性
・協働性といった態度」を学生に集中的に身につけてもらえるよう、努力すべきではな
いだろうか(知識・技能の蓄積が行われても構わないが、そこに主眼を置く必要はない)。
特に1年生を学びという点から動機づけることは、すなわち貪欲に探究し続ける態度を
涵養することでもあり、結果として知識・技能の蓄積にもつながっていくはずである。
1年生の動機付けという視点からは、学修成果のレベルについても議論となる気がして
いる。過剰に高いレベルの学修成果を要求すると、結果だけを安易に追い求める形式的
な学習スタイルとなり、動機付けにもつながらない。「大学と地域」においては、こう
した共通教育の(自身の)理念を具現化できればと考え、努力しているところである。